あお くろ ぎんいろ。

ぽつっと、ひとりごと。 たまに、しゅみをつめこんでみる。

2024.11.09_映画『SOUND of LOVE』感想(ネタバレあり)

 






こんにちは。
こんばんは。
おはようございます。

改めて、人間の命の脆さというべきか、いつ「儚くなる」のか分からない、というのを、色んな方々とお話しする中で日々感じています。
だからこそ、優しい人でありたいし、そのために、今この一瞬を強くありたいと、ずっと言い聞かせて、そうであるように振る舞っています。
本当の僕がどんなに弱くても、ほかの人に対しては、そうでありたいかな、と。
 
心情整理などもあり、過去の記事を消したりいろいろしていました。
今後も黙って削除していたりするので、いつの間にかリンク切れになっている、なんということもあるかもしれません。



閑話休題
世の中でASMRが癒やしや快楽を求めていく対象である、というのを読んで、「癒やしは分かるが、快楽…!?」と驚き、予告編で「何だこれ…」となったので、映画『SOUND of LOVE』を鑑賞することにしました。
諸事情により、雨影は映画を鑑賞する分には料金が無料のため、面白くはなさそうだけれどひとまず見てみる、「金返せ!」にならない、ということが可能なので、好奇心の赴くままに鑑賞することができます。有難いことです。

何故か2回鑑賞することになってしまい、大雨と嵐となった11月1日、何故か1回目を観に行くことになりました。天気が悪すぎてもうさっさと帰りたい。



ネタバレ無しで、鑑賞直後の感想を一言で表すなら、「激ヤバ人(びと)たちによるイカれお茶会」。実際に不思議の国のアリスをイメージしたのかな?みたいなお茶会のくだりもありましたしね。
聴診器のくだりでオチは読めてしまったので、終盤30分強、笑い声を堪えられるかだけの、ひたすら勝負でした。
あとは、随所の伏線とか小物とか諸々で、一周回ってひとつひとつに丁寧にツッコミを入れていきたくなりました。
それと、女性不信が加速しそうでした。あと、潔癖症にはちょっと受け入れ難いかもしれません。
人におすすめするかと聞かれたら、おすすめしません。

ここから先は恒例のネタバレしかない感想を書いていきますので、徒然なるままに書かれた文章に耐えられない方、ネタバレが駄目な方はブラウザバックしてください。

 










































あらすじなどは、公式HPをご覧ください。
雨影は映像記憶特化なので、正しいあらすじか確信はありませんが、一応2回観て、記憶のブレは多少直った状態かなと思われます。
薄い青字箇所が感想です。



物語は、白石明葉がASMR動画を配信しているところから始まります。
薄く青く光る水を注いだグラスの縁をなぞったり、グラスの曲線に両手を這わせて握ったり。
その真夜中の配信を、守屋恭一はイヤホンを着けて聴き入っています。
そして音に聞き惚れるうち、守屋は仕事で清掃中だった、公衆トイレの男子便所の小便器に指を這わせ、画面内の明葉が立てる音に合わせて、便器で音を出します。
音をシンクロさせ、彼女の吐息と共に、興奮が高まっていきます。

 最後の液体が零れるところと、トイレブラシの白い柄は、射精を思わせる描写かなと思いました。ここは描写として美しく、巧いなあと。
 

守屋が明け方帰宅すると、自宅の布団では、彼女の中村玲美が眠っています。
彼女に隠れるようにして、パソコンを取り出すと、明葉の配信を再びヘッドホンを装着して視聴し始め、自慰をします。
そのままソファで眠ってしまったようで、昼頃、玲美に起こされます。
その後、二人で散歩をしていると、玲美から「結婚したら仕事辞めてもいいよ。守屋くんには、うちに居て、家事してくれるだけでいい」と押し付けるように言われます。

玲美と守屋は結婚を近々予定しているようで、玲美の両親に会いに行くことになっていました。
しかし、当日の直前になって、守屋の全身からは汗が噴き出し、呼吸も乱れ、「ごめん、ちょっと今日はだめかも知れない」と零しますが、玲美に気圧されるようにして、無理矢理連れて行かれます。
玲美の母親はちらし寿司を作って歓迎しますが、守屋は勧められた食事を、その場で吐いてしまい、家を逃げ出しました。

 家という組織、役割に慣れずに育った人間にとって、家に対して恐怖を抱くのは理解できました。自分もそうなので…。解釈は違うかもしれないけど、守屋の気持ちがすごい分かる(気がした)。
 というか、もともと無理だって言ってるのに、そしてあんな尋常じゃない様子だったのに、首に縄付けて引っ張って行ったっていいことにはなりませんよ…玲美の尽く上から目線というか、「〜してあげる」とか、「家事さえしてくれれば」みたいな、家事を舐めたような言い方とか、端々から嫌いな要素が飛び出ていました。
 それに、あんなじっくりねっとり、大人三人から、自分が食べるところを凝視されたら、会食恐怖症じゃなくても吐くわ。雨影は会食恐怖症なので絶対無理です。
 何、あの異常なまでに「幸せ」を前面に出した家。気持ち悪い。あれだけで一本、ホラー作品書けますよ。
 おそらく明葉さんのASMRを聴くために買ったのであろう、ヘッドホンがオーディオテクニカだったところだけ守屋への好感度が僅かに上がりました。
 

飛び出した守屋を追い掛け、玲美が彼を抱き締めて「逃げないで」「私が守ってあげるから」と言います。
その日の夜、ソファで眠る守屋は夢に魘されていました。
児童養護施設に預けられたときの記憶が蘇っています。真っ黒いドレスに身を包み、幼い守屋少年の頭を撫で、「すぐ迎えに来るからね」と言って、ハイヒールを鳴らしながら立ち去った母の姿。
守屋少年は泣きじゃくりながら、「お母さん」と何度も呼びますが、母親が振り返ることはありませんでした。

夢から覚めた守屋は、パソコンを引っ張り出し、いつものように明葉のASMR動画の配信を見始め、下半身に手を伸ばします。
画面の中で飴を舐める明葉と同じように、指を一心に舐めしゃぶる守屋……しかし、背後には玲美の姿。
守屋は突き飛ばされ、慌てて言い訳をしようとしますが言葉が出てきません。
玲美は画面を見下ろし、「何これ。ほんっと気持ち悪い。もう要らない」と吐き捨てます。
そのまま出て行こうとする玲美に、守屋が追い縋りますが、「正直ね、誰でも良かったの。大人しくて私の言うことを聞いてくれる人なら。でも、あなたは無理」と冷たく突き放され、一方的に別れを告げられます。
呆然と床に倒れている守屋。
すると、配信が続いていたパソコンの画面から、ハイヒールの音がして、そちらを見ます。
守屋は、思わず画面に飛びつきました。
明葉がライブ配信で歩いているトイレは、守屋がいつも清掃している公衆トイレだったからです。
守屋は居ても立っても居られず、そのトイレに向かって一目散に走っていきます。
しかし、息を切らせて公園に到着した頃には、ライブ配信は終了していました。
それでも、守屋はトイレに足を踏み入れます。
そして、扉が閉じた多目的トイレの個室に向かって、明葉の音が好きだとを吐露します。
その場を去ろうとしたとき、個室の中から、便器をハイヒールで擦る音が聞こえました。
断続的にハイヒールで擦る音。守屋は堪らず、床に置いていたトイレブラシを手に取り、腹這いになって、床を擦ります。
セッションのように音を奏で、興奮が高まっていく守屋(明葉もそのような様子が垣間見えます)。意識が真っ白い光に覆われます。

 申し訳ないけど潔癖症には受け入れられない場面の連続で、守屋=狂人のイメージが定着した瞬間でした。いくら掃除していても無理。気持ち悪い…。嘔吐は生理現象だからいいけど、これはあかん。
 「思わずこうしちゃったんです」と言われようが何だろうが、汚いものは汚い。冒頭、素手で男子便所の小便器を擦ってた時点で無理でしたが、見ていて吐き気がすごい場面でした。


気が付くと、守屋は昼間の公園、噴水の縁に仰向けで倒れていました。
トイレに戻りますが、明葉の痕跡はありません。
個室の扉を開けると、彼女が生配信で履いていた赤いハイヒールが便座の上に揃えて置かれていました。
それを外に持ち出し、噴水の傍に横になって、歩かせて、靴の音で楽しむ守屋。
やがて、ハイヒールの内側に電話番号が書かれていることに気付き、慌てて電話を掛けました。
明葉が電話に出ます。
彼女は、ハイヒールを「よかったら貰ってください」と言い、そして、「お会いしませんか」と誘ってきました。

 気が付いたら移動しているのが怖い。記憶ぶっ飛んでるじゃん…。どうやって移動したんだよ。というかその移動に何の意味があるんだよ…。
 

レンズの小さなサングラスを掛けた守屋が、カフェを訪れます。
「待ち合わせです」と言って、店員に通された先には、赤と黒のドレスを纏い、大きなつばの、黒い帽子を被って、大きいレンズのサングラスを掛けた明葉が席に座っていました。
向かい側に座った守屋が、サングラスに慣れないことを理由に、自分のサングラスを外そうとしますが、明葉から制止されます。
お互いに顔を見ないままで、極力音だけで感じたい、とのこと。
その後、明葉に連れ出され、見知らぬマンション(明葉の自宅でもない)の屋上へと誘われます。
東京スカイツリーが間近に見え、夕焼けが綺麗な景色に見惚れる守屋でしたが、明葉からは、「目は瞑って、耳だけで感じてください」と言われます。
そして、守屋が「何で会ってくれたんですか?」と尋ねると、明葉が間近に近寄って来て、耳元で「貴方の床を擦る音に興奮したから」と囁きかけます。
それが忘れられない守屋は、次の仕事現場のビルでも、床を指で擦っていました。
すっかり明葉の虜になっている様子が窺えます。

 このときの守屋のサングラス顔、完全に「見るからに怪しい道具を売っている某国の末端のインチキ売人」感が溢れ出ていて気持ち悪かったです。
 明葉さんの「似合っていますよ」という感想は、本心なのか、単なる社交辞令なのか…。一緒に選び直したりはしないんだね。
 というか、ホラーの映画やゲームで親の顔より見たので、「真っ赤な服の女」「真っ黒な服の女」「長髪の女」「やたらと妖艶な女」属性に対する警戒心があるのですが、初登場から明葉さんは全部踏み抜いてきたので、「逃げろッ!おら、ダッシュだよ1年!!」という生存本能しか働かなかった。ここで書くのも何ですが、最後に至っては、伽椰子みたいになってたし、映画のカテゴリが迷子です。
 内心を表す音楽は、こういう「音」にフォーカスした作品では不要な要素ではないかな、と感じました。
 

明葉からの連絡で、二度目に会う約束をした後、守屋は「いい音がしそうな靴」を靴屋の店員に頼んで選んでもらい、その革靴と、スーツに身を包んで明葉に会います。
上機嫌な明葉とアスファルトの上で追いかけっこのような遊びをして、彼女から「いい音」と褒めてもらいました。
それから連れて行ってもらったレストランは、ほぼ真っ暗で、明葉がテーブルの蠟燭の火を吹き消すと、完全な暗闇に包まれます。
その中でコース料理を楽しむ、という趣向の店のようでした。
暗闇の中だと味が分からない、という守屋に対し、明葉は「集中して、私の音を聞いて」と言い、彼の耳元で咀嚼音を聞かせます。興奮か食欲か、守屋は唾を飲みました。
その後、明葉から「私の配信はどんな感じ?」と聞かれます。冒頭のグラスの配信の際の感想を訥々と述べると、そのとおり、明葉から手を握られます。
レストランを後にして、道路に横たわる守屋の周りをハイヒールの音を響かせながら回ったり、彼の顔や体の上を飛び越える明葉。
そして、夜の街を二人で遊び歩きます。

 この夜遊び?のときに、何故か主題歌が流れ出すのですが、はっきり言って邪魔に感じました。違和感がすごい。音という要素を大事にする意図があるなら、簡単に音楽で処理しないでほしい。これはほかの何回かの場面でも同様に感じました。
 観客の聴覚に訴えかけて作品を楽しませるのであれば、これは要らない。逆に、こういう曲を流したり、都会の夜景の美しさといった視覚情報を挟むせいで、普通のメロドラマと同じように感じられるから、やめてほしい。
 二人が遊んだという描写を省かずに、この二人がどういう会話をしたのか、どうしてこんなところに来たのか(高速道路上の歩道橋や、街中のタクシー)、描いてほしかったかなと。
 

静かな住宅街の中、彼女の家に到着して、別れようとすると、守谷の内心を読んだように、明葉が「何か、飲んで行きますか?」と誘います。
リビングで、スクリーンに映し出された無声映画戦艦ポチョムキン』を、二人並んで座って眺めます。
明葉が徐に、クラッカーにヨーグルト?蜂蜜?のようなものを塗って食べる音が大きく聞こえ、守屋がそちらを見ます。
「合わないと思うでしょ」と言った明葉が、「小さい頃発明した、秘密の味」とそれを守屋に差し出し、食べさせます。
二人の距離が自然と縮まり、キスを交わしました。
守屋のシャツのボタンを外す明葉。興奮で息が荒くなる守屋。
「名前を呼んで」と明葉に言われ、守屋が口にします。
ネクタイで目隠しをした彼を横たわらせ、明葉は指と唇で、守屋の肌を愛撫します。

少し時間を置いて、ベッドの横に二人で座っています。
守屋の胸に耳を当てた明葉が「心臓、速くなってる。でも、いい音。もっとはっきり聴きたい」と言います。
そして、彼女は、思いついたようにパッと表情を明るくし、「今度、聴診器を買ってきます!お医者さんが使っているような、いいやつ!」と守屋に言いました。
守屋は「顔、見てもいいですか」と尋ねますが、明葉からは「だめです」と返され、「すみません」と謝ります。
それから、明葉に対し、「幸せのイメージってありますか」と尋ねます。「イメージ?」と繰り返した明葉に、「幸せって何だろう、って考えていて」と零す守屋。
明葉は、「気持ちいいことをいっぱいすること。私は、もっともーっと、気持ちよくなりたい」と答えました。
守屋は無言でした。

 ふーん…、鼓動を「直接」聞きたい、ねぇ……(オチが読めてしまったときの残念顔)
 こんなクレイジー女が聴診器で満足するわけないですよね、というか、何をまともぶったことを急に言い出すんだこの狂人は、と思いました。
 あと、「幸せ」の概念がそんなに違うなら、その人と添い遂げて幸せになろうなんて無理だよ!!!気付け!!!
 『戦艦ポチョムキン』は、オデッサの階段を映したかったのかな? この作品で出てくる要素と関連するといえば、すぐに浮かぶのはそれでしたが…。


明葉と会うようになって、守屋の冴えなかった服装も、だんだんと垢抜けたものに変化してゆきます。
ある日、彼は見知らぬ団地に呼び出されました。
「もしかしてぇ、『守屋』ですか?」と気怠い声がして、振り返ると、目の焦点の合わないまま、にたにたと笑っている女が立っていました。
彼女に目隠しをされ、連れて行かれた先は、地下の小さなクラブのような場所でした。
少人数ずつでキマッたようにして、ぐったりとしたり、体を揺らしている人々が音楽に乗せて踊っている隙間を、守屋が縫うように進みます。
DJブースの隣では、聴診器を身に付けた明葉が、ナース服のコスプレ姿で踊っていました。
明葉と守屋が話そうとすると、DJブースから、白衣を纏ったクラブのオーナーの三上隆麿が陽気に下りてきて、守屋に話し掛けてきました。
「床を擦ったんだって!?」と守屋の肩を抱くと、このクラブの紹介をします。
彼は、人間が発する脳波(α波、β派、γ派など)を使った曲を作っているとのこと。
特に、人間が性的興奮を得るときには、α波とθ派を同時に出しており、それを音楽に置き換えている、今流れている曲もそうだ、と説明します。
そして、絶頂するときの感覚を作りたい、と語りました。
その後、二人になると、守屋は明葉にバーカウンターに横になるよう言われ、従います。
彼のシャツを脱がせると、明葉は、分厚いゴム手袋に電極を取り付けたような装置で彼の素肌を辿り、独特の旋律を奏で、聴診器で守屋の心臓の音を聴くのでした。
彼らの姿をカメラがズームアウトしていくと、クラブの窓には『君ならスターになれるよ』の文字。
 
 正直、この作品で最も嫌な場面。
 できるだけ嫌いなところより好きなところを探したいけれども、ここはどうしても…というのが、ここで流れる曲は、それはそれで有名だったり人気だったりするのかもしれないけれど、自分にとっては、どうしても、チープな電気グルーヴにしか聞こえなかった。電気グルーヴが半端なく好きなせいで…こういう系統の曲に敏感に反応してしまう…。半端なメロディと、半端なボーカルとしか感じられなくて…。
 そして、三上役の和田聰宏さんだけは、めっちゃお声がいいし、お芝居も大好きなので(LIAR GAMEという顔芸祭りのクセ強作品へのご出演などもありつつ)、おっ安置!と思っていたのです。
 途中から全ッッッ然安置じゃなくて泣きました。やっぱりLIAR GAMEだよここはッ!!!
 

翌朝、守屋が目覚めると、呼び出されたマンション(?)近くの公衆電話ボックスに倒れ込んでいました。
明葉に何度も電話を掛けますが、繋がりません。
帰宅後も、落ち着きなくうろうろしながら繰り返し電話をしますが、同じく連絡がつきません。
力なく崩れ落ちる守屋。
彼女の姿を探し求め、明葉の自宅にまで押し掛けて扉を叩くも、誰も応答せず、扉は開かず、夜まで家の前で座り込んでいても誰も出入りしませんでした。

仕方なく帰宅すると、玲美がリビングテーブルに腰掛けており、「鍵を返すのを忘れちゃったから返しに来た。私ね、結婚することになったの。守ってあげられなくてごめんね。じゃ」と彼を抱き締めて出て行きます。
そんな玲美からの別れも、以前ほど守屋には響いていないようでした。

焦った守屋は、先日のマンションに向かいます。
すると、例の案内役の女が、別の女と一緒に生魚を掲げ持ち、「びちびちびち~」などと、はしゃぎながら千鳥足で歩いて行くのを目撃しました。
彼女たちを追って、この前訪れたクラブに潜り込みます。
すると、三上を始め、クラブの面々が、楽しげに手巻き寿司を食べているところでした。
そこにも明葉の姿はありません。
サングラスも掛けていない素顔のまま、守屋は彼らに向かって「あの!!!」と叫びます。
三上が「お~守屋くん」と以前と変わらない態度で応じますが、守屋は「明葉さんを探してるんですけど!!」と必死です。
しかし、三上は動じた様子もなく、「明葉ならトイレだよ」と答えます。
すぐにお手洗いの扉が開き、明葉が「どうしたんですか?」と平然と現れます。
「どうしたって……どうして連絡に出てくれないんですか」と焦りで言葉に詰まる守屋に対し、明葉は悪びれた様子もなく、「ああ、スマホが壊れちゃって」と答えながら、三上の隣に座り直します。
ほかの人々と同じように手巻き寿司を作り、「サーモンは炙ると美味しいよ」という三上に炙ってもらい、口にしますが具が零れ、「具を入れすぎちゃった~」と一同と笑います。
思わず呆然としていた守屋が突然、「付き合ってください!あなたと結婚したい!!」と言うと、辺りはしんとしますが、明葉は「はい。結婚は分からないですけど、よろしくお願いします」と拍子抜けするほどあっけらかんと答えました。
 
 「びちびちびち~」のくだり、激ヤバじゃん…とドン引きでした。
 脳波がどうこうで操られているのか、それとは別にヤクでもキメているのか、脳味噌だけ大気圏を突き破って宇宙に飛び出していっちゃった感じが……怖い…。
 サングラスの脱着は、この作品において匿名性の保持の有無という意味があるだろうから、ここから守屋は無防備な状態にならざるを得ないということなのかな。
 

先日訪れたレストランで、明葉にプレゼントを渡す守屋。
「ねちょねちょしてる」と言いながら、それを口にする明葉。
それは、蜂の巣でした。
「美味しい」と言う明葉を見ながら、守屋は自分のサングラスを外します。
そして、蜂の巣を食べ続ける明葉の目隠しに、触れそうなほど近くまで手を伸ばしました。
結局、指が触れはしませんでしたが、明葉はそれに気づいた様子でした。
レストランを後にしてから、明葉の家にお邪魔したいと言う守屋。しかし、明葉は、「ごめんなさい、今日は…じゃあ」と断って去っていきます。
去って行く後ろ姿に、守屋は「明葉さん」と呼びかけます。
かつての母の姿を重ね、泣きそうな顔になっています。

帰宅し、明葉の動画一覧を眺めますが、諦めきれず、守屋は明葉の家に再び押し掛けます。
扉に耳を押し当てると、何かを叩きつけるような鈍い音が、断続的に聞こえてきます。
以前と異なり、扉の鍵は掛かっておらず、忍び込みます。
音がする二階へ、階段を上がって見に行くと、素顔でタンクトップ姿の明葉が、こちらに背を向け、裸足でパンの生地を捏ねているところでした。
守屋が「何、やってるんですか」と声を震わせると、明葉が振り返ります。
彼女は恥じる様子もなく「パンの生地を捏ねてるの。足の指にくっ付いちゃうでしょ…ほら」と答えました。
彼女の足元には、三上が下着で目隠しだけ着けた状態で横たわっており、彼女の足の指にくっ付いた生地を、恍惚とした様子で舐め取っていました。

場面は転じて、パンが焼き上がった後。
テーブルに、三上、明葉、守屋の順で座っています。
三上が「焼き上がりましたよ~」と言いながら、パンを持って来て、守屋にも食べるよう勧めますが、彼は力なく「要りません」と答えます。
「まあまあ」と言いながら、なおも三上はパンと紅茶を勧めてきます。
守屋が二人の関係を尋ねると、三上は曲を共に作っているんだ、と答え、明葉のサングラス中央に埋め込んだセンサーで、彼女の脳波を読み取り、作曲をしていることを説明しました。
そして、ポケットから丸めた紙を取り出し、異様な長さの脳波測定結果の紙をテーブルから床いっぱいに広げます。
普通の人間は、絶頂に至る際、脳波の振れ幅が大きすぎて音楽にならないのに対し、明葉はほとんど波形が変わらず、微振動を繰り返しており、それが特徴的であるということ。特に、守屋といるときの明葉の脳波はスペシャルだと嬉しそうに語ります。
この脳波を活かし、作曲することで、脳を解放することが目標だと三上は言いました。
しかし、守屋は明葉に対し「僕は利用されていたってことでしょう!」と怒りを爆発させます。
「貴女は僕を一度も愛したことなんてなかった」「僕はただ愛し合いたかっただけなのに!」と明葉に激情をぶつけると、彼女は鼻で笑って「愛って何?」と聞き返します。
「それは…」と窮する守屋に、明葉は、「恋愛なんて、ただの知識欲の延長でしかない。貴方は、私の顔を何度も見ようとしたでしょ。そうやって、知って知って、それだけ。私はもっと気持ちよくなりたい」と畳み掛けます。
守屋が苦しげに「愛っていうのは…もっと繊細で…」と絞り出そうとしますが、それを遮り、明葉は「そんなものより、もっと分かりやすいものを感じよう?」と誘います。
明葉が三上に近寄って行くと、三上が「ミュージックスタート!」と合図して、音楽を掛けます。
親密な、まるで恋人同士のような踊りを楽しげに見せつけられ、そして彼らが徐々に守屋に近づいてきたため、彼は堪らず外に飛び出して、路地で叫びを上げました。
一方で、時間が少し経過し、明葉宅。
三上が「あと少しで音楽が完成する」と言って、明葉の家を後にしました。

 潔癖症には耐えられない場面がまた来ましたよ。他人のおっさんが舐めたり、いくら恋人だろうが他人が素足で踏んだ生地で出来たパンなんか食べられるか!!!速攻で戻しちゃうわ!!!
 あと、パンの生地(+足裏に付着したバイ菌)ってお腹壊さないのかなという素朴な疑問があります。
 真面目に鑑賞した感想としては、最初は「いい音が鳴る」という理由で買った靴が、今やその音を立てないよう、忍び足になっている様が、対照的な描写だなと感じました。


後日、明葉はいつものようにASMR配信を始めます。
それを眺めながら、守屋は回想というより妄想に近い世界に浸ります。
それは、幼い守屋少年が、真っ黒いドレスを着た母と明葉に挟まれて、ピクニックをしており、二人から頭を撫でられている様。
その少年はいつの間にか現在の守屋にすり替わっており、それでも二人から変わらず頭を撫でてもらって、気味の悪い笑顔を浮かべています。
現実の守屋も、その妄想と同じ、歯を剥き出しにした笑みを浮かべていました。

配信終了後、視聴者から寄せられた様々なコメントの中から、「心臓がドキドキした」というコメントに目を留め、明葉は、唇の中に指を差し込んだり舐め回したり、もう片方の手で胸を揉みながら、彼女も白い意識に包まれます(回想へ)。しかし、表情は冷たく凍っていました。

明葉の父親と思しき男が、彼女のパンツを握り締め、怒鳴っています。
「イッたんだな?」と尋ねる父親。
「イッてない…」と泣きじゃくるセーラー服姿の明葉。
「何でだよ、イくなよ!」と父親は怒る。
「許して」と娘は何度も許しを請います。
「お父さんはお前が心配で、だからこうして…」と明葉に覆い被さる父親。
「イッてないか、もう一度確かめる」と言う父親に、両手を縛られたまま泣き叫ぶ明葉。
「愛してるんだ」と父親は言っていました。

 この作品、回想への導入と回想からの戻り方の演出がえらく下手じゃない…?というのが引っ掛かって、意識がそっちに引っ張られがちでした。
 とっ散らかった小物やらのせいで、本筋に注意を注ぎ続けるのが難しい。
 あと、この性的虐待の場面、タイミングが悪かったせいだけども、リメイク版サイレントヒル2を終えたばかりのせいで、アンジェラにしか見えなかった。あーあの父親クリーチャーになるんだなーと思ってた。
 そして何より、守屋にしろ明葉にしろ、「こういう過去がありました」という「設定」を平面的に描写しただけで、何故そうなったのか、それが具体的にどういう影響を与えるのか、という多面的な描写が一切なくて、薄っぺらく感じてしまう。
 虐待なり親から捨てられた→逸脱していった、という平面的な単純描写をするくらいなら、もっと別の設定を考えたほうが良かった気がする。実際の人間はそんなに単純に構成されていないですよ…。
 

後日、三上から守屋に着信があります。
「もう関わらないでほしい」という守屋に対し、ハイテンションな三上は「少し話したい」と言います。
そして、「明葉の秘密を聞きたくないか。お前は知る価値がある」という言葉に釣られ、明葉と最初に出会ったカフェに呼び出されます。
以前と同じ、冴えない恰好で姿を現した守屋。
三上が守屋に対し「君は本気で彼女を愛しているのか」と尋ねると、「あの人じゃないとだめな気がするんです。ずっと、あの人の音が心を満たしてくれていました」と涙ながらに守谷は答えました。
三上は「ふーん。それなら俺と同じだな」と言い、上機嫌な様子で、カフェのテーブルに乗ったりソファに寝そべったりして、「あいつ(明葉)はイくことができない体でね」「だからずっと探している。本当の快感を」と暴露します。
「あそこまで偉そうなことを言っておいて、本当の快感を知らないんだ。可哀想な子だ」と笑い、だからこそ、自らは愛する明葉のため、曲を完成させる努力をしてきたと語りました。
そして、「やっと完成した。これが俺から明葉へのプロポーズだ!」とUSBを自慢げに掲げます。
そして、守屋に対し「その目撃者となれ。俺の愛を証明してやる」と笑いました。

場面は転じて、明葉宅。
ヨガをしていた明葉のもとに着信があり、「うん」と彼女が頷きます。

地下のクラブ。
守屋が到着したときには、明葉は赤色の下着姿で台のようなものに横たわり、発光するチューブのようなものを体に巻かれていました。
三上は「脳波音楽に足りないのはビートだった。これは俺の心臓の音。これで、全ての神経を解放する!」と告げ、作曲した音楽を流します。
先日、明葉が付けていた分厚いゴム手袋を三上が両手に装着し、彼女の体を、楽器を奏でるように撫で回してゆきます。
すると、明葉も徐々に全身に汗を滲ませ、まるで快感を得ているように身を捩らせます。
守屋はそれをただじっと見ているしかありません。
数分経った頃、三上がやり遂げたように彼女の頭から電極を外します。
三上が満足げに「どうだ、イけたか。イけたんだな!?」と明葉に尋ね、「やったーーー!」とはしゃぎます。
しかし、対する明葉はチューブを投げ捨て、「だめ。ほんと、時間の無駄。なーんにも感じなーい。感じなーい」と冷めきった笑い声を上げました。
台から降りて、さっさと白いワンピースを着直す明葉に、「嘘だろ!?」と取り乱した様子で三上が迫りますが、「役立たず」と吐き捨てられます。
彼が「どれだけ俺が時間を費やしてきたと思ってるんだ!?」と縋りますが、明葉は「知らない」「無駄、ぜーーーんぶ無駄ーーー!!」と構わず言い返します。
そんな態度に怒りを露わにした三上は、「クソッ!!この欠陥品が!!」と叫び、彼女を押し倒して顔を何度も殴りつけます。
守屋は、彼の背後から近づき、無表情のまま、椅子のようなもので彼の頭を思い切り殴り、明葉と共に外に出ました。

 純粋に気持ち悪くて涙が出るほど笑いました。あれかな、和田永さんの演奏に触発されでもしたかな。だとしたら、気持ち悪い影響の受け方しちゃったなあ…。
 染谷さんのエロさも感じないし、単純に「何これ。何この時間…」という苦痛を味わわされた。
 結局、明葉さんは何がしたかったん?というのが全く見えてこない。


夜明け。守屋に支えられながら、長い歩道橋の坂道を上る明葉。
中盤までの上品な物腰は見事に雲散霧消し、露骨に言葉遣いが悪くなっています。
「貴方って、自分が一番不幸って顔してる。どうしてそんな顔なの」
「……生まれつきです」
「どうせ、生まれつきの環境がどうとかってやつでしょ」
「…………施設で育って。親が居なくて」
「ほら当たった。だから、愛が欲しい愛が欲しいって言ってたんだね」
と言って、明葉は狂ったように笑いました。

辿り着いた明葉宅。
玄関口に横たわる明葉と、近くの壁に凭れて座り込んでいる守屋。
(この時点で、彼の近くに包丁が見えて、ああ、やっぱりね、と確信が持ってしまう訳だが)

「何で私がいいの」
「母親の唯一の記憶が、頭を撫でられたことで。その音が、明葉さんの触る音に似てて…」
「気持ち悪い」
そう吐き捨てる明葉にも、守屋は泣きながら「お願い、撫でてください」と頼みます。
明葉は身を起こし、守屋に近寄って頭を一撫でしますが、「勝手に母親代わりにしないで」と冷たく突き放します。
それでも、守屋は「愛してほしい」と泣きじゃくります。
そんな彼を引き倒し、明葉は守屋の首を容赦なく絞めます。
「死ね。愛とか一番気持ち悪い。早く死んで?」
憎しみを込めた声で言う明葉に対し、守屋は抵抗しません。
眼球が飛び出そうになりながら、急に、彼は「何か、感じる……これが、愛……」と引き潰れた声で話し、明葉の頬に触れようと指を伸ばします。
しかし、明葉から「触るな!」と平手打ちに遭い、首絞めから解放されます。
次に明葉は、「切り刻んであげる」と小振りな包丁を持ち出して守屋に向けます。
「動かないで」「動くな!」と威嚇しますが、守屋は構わず歩み寄って来て、刃先がメリメリと音を立てて、彼の心臓を突き刺してゆきます。
恐怖で手を放す明葉。
白いシャツを血で染めながら、守屋は明葉に向かって「心臓の音、好きだよね。…直接、聞けるから」と、明葉の頭を引き寄せ、自らの胸に彼女の耳を当てます。
一時、明葉の動きが止まりますが、我に返って「やめて!」と守屋を突き飛ばします。
守屋が転んで尻もちをついた床には、聴診器が落ちていました。
彼は、それを手に取り、息も絶え絶えになりながら、チェストピースを、心底苦しげに呻きながら、刺し傷にめり込ませます。
座り込み、「意味分かんない、ほんと…」と泣きそうになっている明葉に向かって、「明葉、…………聴いて」と、彼女の両耳にイヤーピースをはめます。
守屋の心臓の音を聴いていると、だんだんと明葉の呼吸が陶酔したように変化してゆきます。
シンクロするような呼吸と心臓の音。
そして場面は暗転し、一度強く、「ドクン」と拍動して終劇。

 守屋が明葉に求めた、あるいは抱いた感情は、母性愛もだけど、確かに(普通の、と書くと語弊があるけれど、普通の)性愛もあったと思うんだよな… 。
 現代特有のような気がするけど、何でもYes/Noで切って、「私はあんたの母親じゃねえんだよ!」と相手の気持ちをずっぱりと切り捨ててしまうことって、簡単だし、第三者から見て、ある意味爽快に映ったりもするけれど、そういう単純なことではない気がしました。
 余白が許される世界ではないんですかね…。
 それはそれとして、終盤の明葉さんが伽椰子にしか見えなくて、これはコメディなのかな、ホラーなのかな、とよく分かりませんでした。
 

 総評?すると、サイケデリックなクラブでプロポーズだ!というあたりからずっと笑いっぱなしで辛かったです。万華鏡みたいな背景は目がチカチカするしな。
 そして、序盤で、潔癖症からしたら有り得ない奇行の数々を見せた守屋ですが、その後の登場人物全員のクセが強すぎて、まともに見えてくる不思議でした。
 ASMRは端緒でしかないと思いますが(むしろASMRがテーマだったら、この出来には正直、僭越ながら、二、三発ぶん殴らせていただきたい所存)、「音」に振り回されていく男女の姿を描きたいなら、もっと排除すべき要素や、反対に掘り下げるべき場面があったように思うなあ。そこがとても残念です。