こんにちは。
ゆるっと年が明けてしまいました。一年を早く感じます。
冬は夜空が特に綺麗なので、いつまでも見上げているのですが、とはいえ分かりやすいオリオン座を眺めているくらいのものです。
最近、ベテルギウスが暗くなっているそうで、超新星爆発なのかとどきどきします。
閑話休題、先日、映画『パラサイト 半地下の家族』(原題:Parasite)を鑑賞しました。
これまた日記帳に感想を書きつけていたら、手が疲れてきたので、こちらに書きます。
ただのメモとして書くだけですので、これから先は結末までのネタバレを含む感想しかありません。
本作品の結末を知りたくない、という方は、今すぐこんなページは閉じて劇場でご覧ください。
また、拙い文章を見たくない、洗練されたレビューを読みたい、という方も、ここまでお読みいただきありがとうございました。ほかのページを検索なさってください。
一言で書くと、様々な意味で「すごい」作品であり、濃密な2時間強でした。
さて。ここまでスクロールされたということは、ネタバレしかなく、かつ阿呆な文章でもよいということですね…。ありがとうございます。
それでは、順を追って感想を書いていきます。
本作品のあらすじは、公式ホームページなどをご覧ください。
まず、半地下に住む、失業中のキム一家の家の様子から始まります。
この作品は、全編を通して、生活臭がすごい。
特にキム一家については、その不衛生かつ汗ばむような空気や、湿気た呼吸まで肌で感じられるような、五感すべてを使って没入したような感覚があります。
だからこそ、鑑賞後、かなり疲労を感じたのですが…
この半地下住居という舞台設定もよかった。
住居のうち、地上の高さに出ているのは、おそらくトイレと、リビングから見上げる窓くらいのもの。
地下から覗きこむようにして、外の貧しい世界を家族で眺めながら暮らしています。
そしてこの半地下という環境のために、後の大雨で大変なことになるわけで。
キム一家の息子であるギウは、豪邸に暮らすパク一家の娘の家庭教師をすることになりますが、この機に乗じてギジョンを紹介した辺りで止めておけばよかったものを…と思ってしまうな…
でも、おそらく社会全体で人余りの状況にあって、貧困から抜け出すチャンスがあったら、飛びつきたくなるというものかもしれない。
ギウからギジョン、ギジョンからお父さん(ギテク)、お父さんからお母さん(チョンソク)、と芋蔓式に、パク一家の使用人や家庭教師のポジションを獲得していき、パク一家に寄生していきます。
その過程で、パク社長の運転手と、長年お世話をしてきた家政婦が、キム一家によって罠にかけられ辞めさせられることになるのですが、…まあ、この時点で、どちらかが復讐に来るよなあと思っていたら、まさかあんな展開になるとは思いもよりませんでした。
パク一家が住むより前、その豪邸を建築した建築家が住んでいた時から、家政婦をしていたムングァン。
そして彼女自身も、そのことに誇りがある様子。
そして、パク社長の美しい妻であるヨンギョから「私たちよりこの家に詳しい」と言われていたことからも、彼女は、住人というより、家自体に愛着というか、執着のようなものがあるのかなと感じました。
さらに、この豪邸にも地下室があるという描写から、何か秘密がありそう…?と思っていましたが。
ちなみに、辞めさせられたもう一人である、運転手の方はその後まったく登場しません。
まあ若いし、就職先はほかにもあるのかもしれないけれども。
でも、(キム一家が仕掛けた罠のせいで)社長からの印象は最悪の状態で辞めさせられたし、圧力を掛けられて、同業の運転手には就けない、とかあり得そうだけどなあ。
これも余談ですが、運転手の若い男性の方は、社長が座る後部座席で、麻薬をキメた女とカーセックスをしたと疑われ、家政婦の方は結核を患っていると疑われ、それぞれ辞めさせられています。
キム一家が仕掛けた罠は至極簡単なものですが(座席下に脱いだパンツを置いたり、アレルギー症状を引き起こしたり)、パク夫婦が世間体を気にしたり、プライドが高かったり、他者に無関心だったりということが要因となって、辞めさせるに至っているというのが何とも皮肉でした。
話は本筋に戻り、無事パク一家に寄生することに成功したキム一家に、事件が起きます。
ここから一気にシリアスになっていくのですが、逆に言えばここまでは、ブラックユーモアやヨンギョのあまりもの単純さに笑える場面も多く、コメディタッチと受け取れました。
パク社長の幼い息子であるダソンの誕生日を祝うため、一家はキャンプに行きます。
雇い主の居ぬ間に、キム一家は豪邸で思い切り寛ぎ、まるで豪邸の住人であるかのように過ごします。
ギウは、日光が燦々と降り注ぐ整った庭で、教え子であるダヘ(女子高生。年相応で、可憐。)の日記を読み、
ギジョンは、豪奢な浴槽に入りながらテレビを観て、
両親はリビングのソファに寝そべって庭を眺めていました。
そして夜は酒を浴びるほど飲んでの宴会。外は大雨。もうこの時点で、家主はキャンプを中止して帰ってくるなあ、というのは予想できた。
この豪邸や金が自分たちのものになったら、という空想に耽りながら、全員ふらふらになるほど飲みます
(しかも、この時のリビングの散らかし方が尋常じゃなく汚い。演出としては上手いと思いました)。
リビングの大きな窓から見える、どんどん激しくなっていく雨。そんな中、インターホンが鳴り響きます。
玄関のモニターに現れたのは、全身ずぶ濡れになりながらも異様な笑みを浮かべたムングァンでした。
忘れ物を取りに来た、と言うムングァンを、訝しみながらも家に入れることにする。
彼女は、濡れ鼠のまま地下室に消えていき、いっこうに戻ってきません。
しびれを切らしたキム一家が地下に下りると、地下室には隠し扉があり、その先に、さらにコンクリート打ちっぱなしの下り階段が続いています。
曲がりくねった階段を下りていった先には、最低限の住環境のある狭い地下室があり、そこには、ムングァンの夫が衰弱した姿でベッドに横たわっていました。夫は、ムングァンから食料を供給されていましたが、彼女が追い出された後はそれが途絶えたため、衰弱しきっていました。
ここから先、地下と地上の対比がさらにはっきりとしていて、地下の場面を見ていると息苦しくなるほどです。
ムングァンが語ることには、この地下室は、家を建てた建築家が恥と感じたのか、存在を隠していたものだった。
彼女の夫は借金取りに追われており、建築家が家を去り、パク一家が越してくるまでの間に、この地下室に匿った。
しかし、匿って4年経つにもかかわらず、まだ借金取りは夫を探している。
だから、どうか時々夫に食料を与えてやってくれないか、とチョンソクに懇願します。この時点では、チョンソク以外のキム一家は物陰に隠れて話を聞いていました。
一方のチョンソクは、警察に通報する、とすげなく返し、実際に携帯に指を掛けます。
しかしそこで、ギテクがバランスを崩し、隠れていた3人が階段から転げ落ちてしまいました。
すかさずムングァンは、4人は一家でありグルである、という証拠の動画を撮影し、抵抗すれば、動画をダソンに送りつけると脅します。
そして、地上に上がり、リビングで寛ぐムングァン夫婦。
一方のキム一家は、壁際で両手を上げて膝立ちの格好をさせられ、その様子をまた動画に撮られます。
この動画は、まるで核ミサイルのスイッチのようだと言い、北朝鮮の国営放送の真似をする夫婦。
韓国映画だからこそのブラックユーモアのある場面です。
そして、この家の芸術性はキム一家には分からない、と怒鳴ります。
ここで流れる回想が、可笑しいのか切ないのか身勝手だと思うべきなのか、違和感を覚えると言うべきか、複雑な心情になってしまいました。
いや、でもきっと、全編通してですが、韓国人であったり、韓国の社会や文化を知らなければ理解できないところはたくさんあるのだろうなと思います。
そして、夫婦の隙を突いてギテクが襲い掛かり、動画を消そうとするキム一家と、阻止しようとする夫婦がもみくちゃになります。
全員必死の形相なのですが、リビングの外からの引きのアングルが一瞬あり、それが何とも泣き笑いのようなコメディ的です。
中でも、ギジョンが冷蔵庫から桃を取り出してきて、桃アレルギーのムングァンの口にそのまま突っ込もうとするところは笑ってしまった。
そんな大騒動の後、今度は電話が鳴り響きます。
いよいよ、パク一家がキャンプを切り上げて帰宅してきます。
帰宅までの8分間で、夫婦を縛り上げて地下に閉じ込め、散らかし放題のリビングを乱暴に片付け、各々姿を隠しました。
この間の片付け方もかなり適当だし、グラスも割れて破片が飛んだりしているので、一発でバレるのでは…と思いましたが、パク一家は気づかず。
チョンソクが鬼のような形相で、ヨンギョに頼まれたジャージャー麺を作っていたのが、笑えるやら、女性陣はしっかりしているなあと思うやらだった。
この過程で、ムングァンが階段を上がろうとしてチョンソクに蹴落とされ、脳震盪を起こします。
ムングァンの夫の独白は、狂気じみているけれども、変に哀愁があるというか、怖いのに切ないというか。
うーん、でもここも文脈が必要な場面なのだろうな。
結局、家政婦であるチョンソク以外の3人は、リビングの広いテーブルの下に身を隠します。
パク夫婦は、そのすぐ隣のソファで眠ることにするのですが…個人的には、ここの対比はツボでした。
昼間はキム夫婦が寝そべって息子を眺めていたこととの対比であり、
ソファの上で悠々と過ごし、互いを愛撫するパク夫婦と、テーブルの下で、悪口を言われても、セックスもどきが始まっても、ただ息を潜めるしかないキム一家との対比。
どうでもいいのですが、ヨンギョが夫のズボンに手を突っ込んで性器を愛撫するところを、照明が落ちているせいでよく画面が見えず、ギテクがテーブルの下で自慰を始めたのかと思った。
つい今しがたまで、悪口(端的に言えば、貧乏人の臭いがひどい)を言われて、怒りか悲しみかを抱いている表情だったのに、急にどうした、感情が行き過ぎたか、と吃驚していたけれども、ただの見間違いでした。
パク夫婦が寝込んだ後、3人は家からの脱出に成功し、豪雨の中、自宅に戻ります。なお、ギテクは裸足です。
この帰路が、ずーっと下りなんです。ひたすら、階段や坂を下っていく。あまりの水量で川のようになった雨の中を、ひたすら、川下の方へ。
象徴的だなと感じたし、天井まで泥水に浸かっていく自宅の中、ギジョンが諦めたように便器の上で煙草を吸う場面は好きだった。というか、全体的にギジョンが好きでした。
ここから、避難先の体育館で一夜を過ごすところまでが、個人的に最も見入った場面です。
翌朝、キム一家の事情など知る由もないヨンギョは、晴れ渡った空の下、自宅の庭で改めてダソンの誕生日を祝うホームパーティをすることに。
ヨンギョの友人のセレブたちがゲストに呼ばれる中、キム一家もそれぞれ、ゲストや荷物持ちとして、自宅に招かれます。
この時の、苛立ったようにも泣き出しそうにも見えるギウが、見ていて辛い。
そして、前日までは、あれだけ金持ちに憧れ、ぎらぎらしていた一家が、人が変わったようにどこか放心状態になっている様子が、まるで夢から覚めるというか、酔いが醒めたようだった。
一方のムングァンは、夫のところへ這い戻り、「チョンソクはいい方。でも、私を蹴落とした。忘れないで、チョンソクよ、チョンソク」と言い残して、夫の目の前で息絶えます。
激高する夫。この前夜に、夫の独白を聞かされているので、狂気に彩られているけれども、その心情に共感してしまって辛い。
もうここからは先が読める展開。
地下室に下りてきたギウを、ムングァンの様子を心配して声を掛けている背後から、夫が襲いかかり、逃げるギウの頭に大きな石を振り下ろします。
2度も思い切り打ち下ろされたので、これは死んだな…と思っていましたが、死んでなかった、吃驚した。
台所から包丁を抜き取り、今まさに最も盛り上がろうとしているパーティ会場に踏み込んで、ギジョンの胸に思い切り突き刺します。
平和で、穏やかで、楽しげに振る舞う金持ちの人々と、地下から這い上がってきた、血塗れでゾンビのような有様の男が、あまりに対照的。
一気に恐慌に陥り、逃げ惑う人々。その中に、頭から血を流すギウを背負ったダヘの姿も。
ダソンは白目を剥いて倒れ、ひきつけを起こします。
男は、チョンソクの名前を絶叫。
出血の止まらないギジョンに駆け寄る両親。男とチョンソクが揉み合いになります。
その最中、ダソンを救うには、救急車を待っていては間に合わないため、社長が車を出せとギテクに指示。身勝手だけれど、必死なんだよな。
男は、ソーセージの刺さった金串を横腹に突き刺され、その場に倒れます。
偶然にも、ギテクが社長に向かって投げた車のキーがその下敷きとなってしまいます。
社長が、それに表情を歪め、臭いもののように鼻を抓んで、死体の下からキーを抜き取ります。
しかし、この鼻を抓んだ行動が、ギテクに、言われた陰口を想起させてしまいます(先刻、ヨンギョにも同じ動作をされていた)。
社長の仕草は、あの場では男の体臭や血の臭いが原因なのだろうけれど、地下の人間を蔑んでいることを暗示しているようにも取れる。
無表情に近い様子で、ギテクは包丁を手に取り、社長に飛びかかり刺殺。そのまま、ギテクは外に飛び出し、忽然と姿を消します。
ギウは、手術により命を取り留めますが、笑いが止まらなくなります。
後遺症もあるのだろうけれど、それだけではないだろうなあ。
ギジョンは亡くなり、母と2人、半地下の住居に戻って暮らします。
そして時々山に登り、あの豪邸を双眼鏡で見下ろします。
既に、別のドイツ人家族が入居していましたが、そこで、ギウは、地下室に隠れる父からのモールス信号に気づきます。
ギテクは、近隣の監視カメラにも映らず、現場から姿を消したと思われていましたが、あの豪邸の地下室に戻り、隠れていたことが判明。
父からの長い手紙を、ギウはモールス信号を読み解くことで受け取ります。
そして、ギウは、返信を書くことにしました。
「根本的な解決」として、金を稼ぎ、将来、その豪邸を買い取ること。
「父さんは、ただ地上に上がってくるだけでいい」として、ギテクと、チョンソクと大人になったギウが家の庭で再会する場面が描かれます。
…まあ、ただの夢想なのですが。
どうやって届けるつもりなのかが不明だな、と思っていたら、案の定、空想だった。そんなハッピーエンドがあり得るわけがない。
空想から覚めたギウが、相変わらずの半地下のリビングで、手紙を虚ろな目で眺め下ろすところで、終幕です。
半地下の自宅も、冒頭のように、脂ぎって不衛生で汚らしいが、ある意味エネルギッシュな印象もあったところが、最終的に、寂しく冷え切った場所になってしまったなと感じた。
それにしても、鑑賞後にどっと疲れるほどの没入感もあり、一方でそれらを眺める冷淡な目線もあり、悲喜劇とでも言うような、濃度の高い作品でした。